茶話

【徹底解説】天然の玉露の秘密

美味しいお茶の代名詞といえば「玉露」ですね。今回は、玉露についてのお話です。

玉露って何?

玉露は煎茶のなかの製法のひとつの種類に分類されます。私が海外向けに英訳するときはJewel-like dew(宝石のような雫)という表現を使っていますが、必ずしも正確ではありません。
もともとは、幕末前の天保年間に茶葉を丸くあぶったのが始まりで、宝石を意味する玉ではなくて本当に丸い玉だったようです。

玉露はうま味のテアニンが最も豊富なのが唯一の特徴です。私の両親もそうでしたが、贈答品に美味しい玉露を贈ったり、来客用に提供したり、特別な時に味わうお茶として使われてきました。明治以来のこの習慣も今では、「自分へのごほうび」としての使われ方が多いようです。

うま味が多いので、一番茶が中心で二番茶まで採れるかどうかです。例えば、無理して三番茶や秋冬番茶などで摘んでしまうと、翌年の収量がガタッと落ちて一番茶の生産に影響が出てしまいます。
一般的に秋摘みをするかどうかは、その時期までの累積の気温で判断します。十分に暖かい日が続けば、秋摘みもできますし、10-11月の光合成が活発時になる時期に、葉が十分に育っていれば光合成でエネルギーをつくって冬を乗り越えて、翌春まで体力を蓄えてくれます。

うま味のテアニンはアミノ酸なので、もともとは窒素が必要です。酸素と栄養分が豊富な土壌でしっかりと根を張り、根元でアミノ酸がつくられ幹と枝をとおって葉先に向かい成長に使われます。そのため、先端の葉がもっともアミノ酸であるテアニンが豊富です。
先端を一番目の葉(一芯一葉)とすると五番目の葉ではもうアミノ酸の量は1/3くらいまでに減ってしまいます。株面から高い位置の方がアミノ酸は多いのですが、葉の数は少なくなります。つまり、1本の木からも「美味しいけど収量は少ない」「アミノ酸は多くないけど収量が多い」と反比例の関係にあります。

美味しい玉露はお値段が高い、という理由はここにあります。

天然の玉露って何?

一般的な玉露は被覆製法といって収穫前の茶畑に1週間から2週間程度、遮光率85%前後の黒色寒冷紗をかけてうま味のテアニンがカテキンに変化しないように栽培します。京都の玉露や抹茶用の碾茶、三重のかぶせ茶、福岡八女の玉露など期間は異なりますが、概ねこの方法です。
日本茶の栽培にとって寒霜害は大敵です。黒色寒冷紗の掛け方にムラがあったり段差があったりすると寒気がある部分に溜まったりして悪影響があるので、茶農家さんたちも気が抜けません。

一方で、天然の玉露と呼ばれるお茶があります。
ひとつは、品種改良で生まれたお茶。「あさつゆ」が代表的で、その子の「さえみどり」や孫の「さえあかり」などもうま味があります。
もうひとつは、本当に天然の環境条件でできるお茶。「美濃白川の煎茶」です。

あさつゆは、味がまろやかで水出しでもおいしいお茶です。アミノ酸が増えるように品種改良されたお茶なので二番茶でも美味しいです。ただ、生育が悪いのと蒸し度が弱いとクセのある香りになり、強すぎると揉み工程が難しくなります。生産量は少なく、鹿児島や福岡、三重などが中心ですが、関東や東北でも栽培されている農家さんがいらっしゃるようです。さえみどりも鹿児島や熊本が中心です。基本的に凍霜害を受けやすく回復が弱い品種なので、南の早生の茶畑が多いのだと思います。

本当に天然の環境条件だけでできる「天然の玉露」ならば、美濃白川産がおススメです。
そもそも寒さに弱いお茶を寒さが厳しい木曽山系に近い美濃で栽培できていることが不思議です。しかし、600年の歴史に耐え抜いた茶の栽培で、被覆も品種改良もなしで美味しい玉露ができています。この秘密は、前回のブログにも書いたように、日本で最も高い標高による日中の寒暖差と霧の効果です。そして、天然の土壌条件に他なりません。窒素肥料を大量に使うと土壌汚染や地下水汚染・NOx・亜酸化窒素による温暖化などが心配ですが、美濃白川では無農薬やオーガニック基準を満たす茶葉もキチンと生産しています。

玉露は自分をいたわる最高のお茶

うま味のテアニンはリッラクス効果と自己免疫力を高めます。
当店おすすめの天然の玉露は、
ZENJIRO 煎茶 40g 1200円(税込)です。
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